「津波防災の日」・「世界津波の日」となる2017年11月5日、東京大学伊藤国際学術研究センター内伊藤謝恩ホールにて、『津波防災スペシャルゼミ in 本郷 〜津波について学ぼう〜』が開催されました。当日は、防災の専門家を先生にお招きして、津波に対する正しい防災知識と理解・関心を深める講義が行われたほか、学生らによる津波防災への取り組みの発表が行われました。
「始業式」と銘打ったオープニングは、学校を想起させるチャイムの音で始まりました。まずは、小此木八郎大臣(内閣府防災担当)が主催者挨拶を述べ、続いて、東北大学 災害科学国際研究所 所長の今村文彦教授が、先生方を代表して“校長先生”として登壇。イベントの趣旨説明を行いました。
1時間目、今村先生の講義では、津波の発生原因や世界の過去事例、また東日本大震災での津波の状況を、図解をもとに解説しました。また、適切な避難行動を取るための「スクリプト」や「津波避難認知マップ」作成を提案するなど、基本的な津波の仕組みから防災の重要さまで幅広い津波防災知識を伝える講義となりました。
2時間目は、兵庫県立大学 減災復興政策研究科 准教授 阪本真由美先生が登壇。津波防災の日の由来となった濱口梧陵の逸話「稲むらの火」を紐解きながら、当時から受け継がれる「共助」の精神を紹介するとともに、現代社会で不可欠となった新しい意味の「共助」、すなわち行政を補完する地域社会の連携についてご説明いただきました。
3時間目は、 “副校長先生”こと東京大学 生産技術研究所 准教授 加藤孝明先生による「ビルド・バック・ベター」についての講義です。時折、受講者へ質問を投げかけるなど能動的な参加を促した講義では、国内外の様々な復興事例に基づきながら、「ビルド」「バック」の意味について多角的な解釈を行うとともに、これからの日本に必要な「より良い復興」についてご説明いただきました。
先生方の講義に続いて行われたのが、防災に関する活動を行っている学生3グループによる発表、提言です。日頃の経験や調査を通して考えたこと、伝えたいことを情熱的にプレゼンテーションして頂きました。
東日本大震災の被災者体験談や避難実例を踏まえて、自分の生活地域の災害リスクを把握することや、徹底した訓練の必要性、さらに高齢者や障碍者など災害弱者との関係づくりの大切さなど、「津波から適切に避難する5つのポイント」を発表していただきました。
災害時の救助や、災害に強い町づくりのためには、地域住民が主体となって行動することが不可欠と考え、「もっと町に出て、ちょっと防災を考える」を合言葉に、幅広い年齢層の住民が、地域に根ざした防災意識を持ってもらえるきっかけ作りをご提案いただきました。
南海トラフ地震に備える兵庫県南あわじ市で、学生主導で開催し、幅広い世代が参加した津波防災フォーラムの取り組みを紹介。こうした活動が契機となり、世代を超えた地域コミュニティの連携が生まれることで、津波災害に強い町づくりにつながっていくというメッセージを伝えていただきました。
各発表後には、今村先生・阪本先生・加藤先生から講評が行われました。
イベントの締めくくり「終業式」では、加藤先生からの終わりの言葉が述べられました。
当日の模様は、ライブストリーミングプラットフォーム「FRESH!」で生配信され、来場者のみならず全国の方々がリアルタイムでゼミを受講し、津波防災の大切さを学ぶ機会となりました。
津波による被害を少しでも減らすためには人々が迅速かつ適切に行動をとる事が大変重要です。津波に対する正しい防災知識と理解・関心が深まり、防災活動の輪がさらに広まるよう、今後も様々な取り組みを行って参ります。